いたが、まだ空はどんよりと曇っている。
 店を追い出され外に出たユストは歩きながら街の様子を観察する。
 今、ユストがいるところはポルス王国の首都である王都ポルスだ。そこには国王の住む城があり、その周りには城下町が広がっている。
「なかなか活気がありますね。いやいや」
 ユストはすれ違う荷車に目を向ける。荷車を引いているのはオーガだ。
 ユストは別の一角に目を向ける。ぼろぼろの衣服を来た傷だらけ亜人たちが建築作業をしている。鞭を手にそれらを監督しているのはユストと同じ人間だ。
 どこを見ても亜人が働いている。そして、働いているのは亜人だけだ。人間はというと管理監督の名の下に彼らに鞭を打ち罵声を浴びせているだけである。ユストはそれらをただ見ている。助けるでもなく止めるでもなく、ただ通り過ぎていく。
 すべてを助けている暇はない。ユストにはやるべきことがある。
 それに、いずれ彼らは救われる。ユストはそれを知っているため、彼らの惨状を見ながら、手を差し伸べることなく進んでいく。
 と、そんなときだ。
「この役立たずが! また皿を割りやがったな!」
 一軒の飲食店から怒鳴り声とともに一人の女性が転がり出てきた。そのあとから男が現れ、女性を棒で殴りながら怒鳴りつけている。
 男は人間だ。女性は亜人だ。それもユストが先ほど手に取っていたバッグの素材に使われていたのと同じ種族であるルナエルフの女性である。女性は長い銀色の髪の生えた頭を抱えうずくまり、棒で殴られながら何度も謝っている。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
 男はルナエルフの女性を殴る。青い肌に赤い血がにじむ。
「この間抜けが! 余計なことばかりしやがって!」
 男は殴るのをやめない。そしてそれを誰も止めようとしない。目を向けることも、気にすることも一切ない。