武器を振り下ろす。その一撃には何も込められていない。ただ彼らは目の前にいる人間を動かなくなるまで殴りつけるだけだ。
 それが誰であろうと関係がない。たとえそれが一国の王であったとしても、そんなことには意味がない。
 人間は等しく死んでいく。
 無表情の亜人たちに誰も彼もが蹂躙されていく。
 ロマド三世はこの国の王としては平凡な男だった。平均的な、それほど特徴のない王だった。
 だが、彼は他の王とは違い、自分が虐げて来た亜人たちと同じように棒で殴られ、武器で打たれ、蹴られ、踏まれて死んでいった。
 彼は、ロマド三世は他の王と何が違ったのか。同じような生き方をしてきた彼と他の王たちとはどこが違ったのか。
 違いはある。明確だ。
 ただし、もしそれを彼に説明したとして彼が納得するかはわからない。
 彼は運が悪かった。
 ただそれだけだった。
 肉塊がまた一つ生まれた。この国の王であった辛うじて人の形を保っている肉の塊が出来上がった。
 亜人たちは動かなくなった男から離れていく。そして、まだ動く人間を探しに歩き始める。
 地獄はまだ終わらない。