声が聞こえなくなる。ロマド三世は部屋の扉を凝視する。
 扉が開く。
「どうも、初めまして国王陛下」
 扉が開き、一人の男が国王の部屋に入って来た。
 それはユストだった。
「だ、誰だ貴様は?!」
 ロマド三世は大声でユストを怒鳴りつけるが、ユストは表情一つ変えず、ただ微笑んでいる。
「ルエズス教会の者です。ああ、先日の方々とは少し違いますが」
「る、ルエズス教?」
 後ずさりしながらロマド三世はベッドの脇に置いてある武器の元へゆっくりと移動し、ユストに見つからないようにそれを手に取る。
「る、ルエズス教がなんのようだ! ま、また亜人たちを解放しろなどというバカげたことを」
「いいえ。その話はもういいのです」
 そう言うとユストはパンパンと手を打ち鳴らす。すると、何かが床から、沼から浮き出てくるかのように現れる。
 ロマド三世は現れたそれを見て短い悲鳴を上げる。
「この方たちに見覚えは?」
「し、知らん! 知るわけがないだろう!!」
 姿を現したのは動かない人間だった。死体だ。昨夜、ユストのところに現れ、ユストに殺された者たちだ。
「調べてみたところ、武装していましてね。どうも、私を殺そうとしていたようなのですよ」
「だ、だからなんだというのだ! それを私が指示したとでも」
「ええ、まあ。心当たりはあなた方しかありませんから」
 ユストはにこにこ笑いながら平然と告げる。
「ですが、そうですよね。陛下がこんな下っ端のことなど知るわけがない。ま、それはいいでしょう」