があるわけでもない。 
 ただ、あるとすれば、あれだろう。
 目が合った。ただそれだけだ。
「運がいい方だ、あなたは。これも神の意思でしょうかねぇ」
 そうつぶやくとユストは先ほどまで座っていた椅子に座って目を閉じる。
「あなたは何も知らず、何もわからないままでいいのかもしれません」
 すべては今日終わる。いや、終わりが今日始まる。
 もう、すでに始まっている。
 
 翌朝、ユストは遠くから聞こえる人々の声で目覚めた。
 それは怒声、叫び声、悲鳴、雄叫びと様々なものが混ざったものだった。と、同時に何かが壊れる音も聞こえて来た。
 この国の終わりが始まった。