く。それは紙とペンと片手に納まる程度の小さな布袋だった。
 ユストはその袋の口を緩め、彼女はその袋の中を覗き込む。
「キレイ……。あの、これは?」
「見ての通りのさざれ石です」
 テーブルの上に置いた袋にはたくさんの小さな石が入っていた。それは細かな宝石のようで、天井の隙間から差し込む光を受けてキラキラと紅や蒼に輝いていた。
「我々、ルエズス教徒が神の御言葉を知るときに使用するものです」
 そう言うとユストは彼女にこの石の使い方を説明し始める。
 と言ってもやり方は簡単だ。ただ、袋の中から指で石をつまんで取り出すだけである。
「ではまずひとつ取り出してください」
「わ、わかりました」
 戸惑いながらも彼女はユストの言葉に従い袋から親指と中指で石をひとつ取り出す。椅子に座り直したユストは、その取り出した石を見て紙に『3』と記した。
「では次に親指と人差し指と薬指でいくつかつまんでテーブルの上に置いてください」
 彼女は言われたとおりに指で石をつまみ出しテーブルの上におくという動作を三回行う。ユストは彼女が取り出した石の色と数を見て、それに対応した文字を紙に記していく。
「出来ました」
 ユストは彼女に文字の書かれた紙を見せる。
「あの、私、字が」
「ああ、すいません。では、ついでに」
 そう言うとユストは彼女に椅子から立つように言うと自分は立ち上がった彼女の足元に膝をつき胸に手を当てた。
「神の与えし御名を、この者に新たな名を」