ユストはそう彼女を諭した。その言葉が彼女の心に届いたのかどうかはわからないが、彼女はそれ以上何も言わず、目を伏せ唇を噛みしめていた。
「さ、行きましょう。今日の宿を探さなくては」
 ユストはそう言うと彼女にそっと笑いかけてから再び前を向いた。彼女はその背中をしばらく眺めていたが、何も言わずユストの背についていった。
 それが彼女にとって正しい選択だったのかはわからない。だが、彼女にとってはユストについていくことが現状を変えるためのきっかけのように思えた。
 そして、そうするしか道は無いようにも、彼女には思えた。
「力ですよ。力」
 ユストは自分の後ろをついてくる彼女の足音に耳を傾けながら小さな声でつぶやく。
「何かを為すには、力が必要なのです」
 そう言ってユストは笑う。その笑顔は先ほど彼女に向けていた物とはだいぶ違っていた。