ユストは謝罪し彼女に対し深く頭を下げる。それに対し彼女は何度も首を振る。
「ごめんなさい、私が。ごめんなさい……」
 彼女は何度も謝り、両手で顔を覆って声を殺して泣く。彼女の涙が顎を伝って地面に落ちる。
「どうして、どうしてこんな。私、何にも悪い事なんて」
 彼女はひざを折りその場に泣き崩れそうになる。それをユストは両腕で優しく抱き留める。
「ひざをついてはいけません。ひざをつくのは神に祈る時だけです」
 そう言うとユストは彼女を支え、優しく微笑みかける。
「神はあなた方のことを見ています。きっと力を貸してくださいます」
「……だったら、どうして、今まで」
 どうして神は今まで助けてくれなかったのか。こんなに苦しんでいるのに、辛いのに、どうして救い出してくれなかったのか。と、彼女は言いたかったのだろう。けれど、それは言葉にはならなかった。
 だが、ユストは言葉にならずとも彼女の言いたいことを察し、それに答えた。
「神はあなた方のことをよく見ています。そして、きっと力を貸してくださる。ただし、すべてにというわけではない」
 そう言うとユストは真剣な表情で彼女の両肩に手を置く。
「神は自らの足で立ち、不条理に抗い、理不尽に戦いを挑む者にこそ力をお貸しくださる。ただ口を開け神の救いが訪れるのを待っているだけの者たちの前に神は現れません」
 ユストはそう言った。そう強く断言した。
「これからです。あなたはこれからなのです。その足で立ち、堂々と胸を張り、抗い、戦うのです。そうすればきっと、きっとあなたの前にも神が現れる」
「でも、わたしには、そんな」
 ユストは首を横に振る。
「力がないと嘆く前に、力を得るために力を尽くすのです」