「ごめんね。本当に具合が悪くて」

 試しに母親を外へと誘ってみたが返ってきた返事はオブラートに包んだ断りだった。

 あの時の母親は本当に具合が悪そうだったのをいまでも覚えている。

「分かった。我慢する。お母さん?お布団かける?」

 五歳の私はそう母親に問いかけた。

 その時はただただ心配だった。

「ごめんね、さーちゃん。少し休んだら良くなると思うんだけど」

「うん。じゃあ、一緒にお昼寝しよう」

 私は母親に早く元気になって欲しくて敷きっぱなしになっている布団へと母親を連れて行った。

 母親は布団に潜るとすぐに深い眠りへと落ちていった。