その頃には父と母は顔を合わせば言い争いばかり。

 そんな二人が家族そろってどこかへなんて連れて行ってくれるはずも無く、それでも個々に私をどこかしらへ連れ出してはくれたけど、それは近場ばかりで。

 そんなこと言えるわけが無かった。

 父か母かどちらかとしか出かけることが出来ないだなんて。

 行くところはただのショッピングセンターやよくてタワーツリーだなんて。

 父と出かける時は浮気相手の麻奈美さんが絶対に一緒にいるだなんて。

 それが私のリアルだなんて。

 言えるわけがなかった。

 それに、質問こそ投げかけてはいたが内心では羨ましくて仕方なかった。