『はい?ねえ、馬鹿にするのも大概にして!私はここ数年アナタから誕生日のプレゼントなんてもらってないのよ?それどころかおめでとうだって言ってもらってない!人を馬鹿にするのもいい加減にして!』

 その頃には父と母の喧嘩はおおっぴろげなものになっていた。

 母は父が浮気をしているのを知っていた。

 父は父で浮気を隠すことも隠そうとすることも無く、むしろ私に浮気相手と会わせたりするくらい開き直っていた。

 学校で他の子の家庭状況をなんとなく把握していた私はそれが普通ではないんだと知っていた。

 だから友達には秘密。

 出来るだけ家に遊びに来る事がない様にしていた。

『沙綾ちゃんはお休みの日にどこか行った?』

『私はタワーツリーに行ったよ。みんなは?どこに行った?』