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 あれは、凛と張る空気の満ちたとある新月の夜のことだった。
 
 当時十歳になっていた私は夜に長く起きていることが増えていた。

 勿論そのことを父も母も知らない。

 私は一人与えられている自分の部屋で電気もつけずにカーテンの隙間から月や星を見上げ物思いに更ける少し変った子供だった。

『ちょっと!何よこのレシート!』

『なんだっていいだろ。って言うか勝手に人の財布漁るなよな』

『アナタがコソコソしてるのが悪いんでしょ?で、何なのよ、これ!』

『聞かなくても分かってる癖に。そうだよ、麻奈美に買ったんだよ。あいつ今月が誕生日なんだよなぁ。そりゃプレゼントの一つや二つ』