アキ兄のかもし出す空気とか、流れる時間が理由もわからないままただ怖かった。

 私がその恐怖の正体に気づいたのはそれからずっと後のとある夏の日の夜のことだった。

 あの時のアキ兄の眼はあの男と全く同じ、黒く冷たい物体だった。