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 それからしばらく後、厳しい寒さを抜け春が網直ぐ芽吹き始める予感が漂う中で私は最初の裏切りを体験した。

「いってきます!」

「アキ君によろしくね」

「はあい!」

 送り出す母の声に、私は元気いっぱい答えて家を出た。

 オートロックのドアの外にはアキ兄が待っている。

 小学生を目前に控えているから私は一人でも大丈夫だと言ったのだが、アキ兄は「迎えに行くよ」と。

 母も「アキ君がそう言ってくれてるのなら迎えに来てもらった方があんしんよねぇ」と。

 私は一人で行きたいという欲があったけど二人ともそう言うのならと仕方無しに二人の意向に沿うことにした。