空が暑い雲に覆われて、昼間だと言うのに真っ暗なある冬の日。
この頃では幼稚園が終わるとバスの発着所に、母ではなくアキ兄が立っていることも珍しくなくなっていた。
「うん!この間ね、ランドセルを買ってもらったの!何色にしたか当ててみて!」
「ランドセルかぁ。僕の時と違って最近のはかなりカラフルだからなぁ。うーん」
アキ兄は繋いでいた手に少し力を入れながら頭を捻る。
それから視線を下ろして私を見て。
にっこり笑みながら「紫」と答えた。
「わ!当たり!大正解!アキ兄すごい!」
「はは。沙綾ちゃんを見たらすぐに答えが分かったよ」
そう言ってアキ兄はもう一度、視線を下ろして私を見る。