「知りたいことは違ったかな?」
「そんなことないの。でもね。あのね。例えばお母さんは私に『あれをしなさい』とか『これをしなさい』とかって言うの。でもアキ兄はお母さんと一緒に住んでないでしょ?なんだかお菓子もジュースも食べ放題だし。だからね、なんか……。アキ兄みたいに大きくなったら好きなことだけしてられるのかなってね。でも違うんだねぇ」
「あはは。確かにこの部屋を見たらそう思うのも無理ないよね。今度からは、いつ沙綾ちゃんが来てもいいようにこまめに掃除をしておくよ。まあ、何も無いから一回で満足だとは思うけど」
「そんなこと無いもん!アキ兄とお喋りするの楽しいよ?また来るよ?」
「そっか。ありがとう」
アキ兄はそう言いながら微笑んだ。
その笑みは優しくて温かくて。
当時の私はその笑顔のイメージのまま、アキ兄の人物像の構築をしていった。