「アキ兄はお掃除が嫌いなの?」
「あはは。ごめんごめん。まさか沙綾ちゃんを招待する事になるとは思ってなかったからさ。そうだね。少し片付けようか。その間暇だと思うけどジュースでも飲んで待っててくれる?」
アキ兄はそう言って冷蔵庫から紙パックのジュースを取り出してマグカップに注いでくれた。
だけど私は全く暇なんてことは無かった。
初めて一人で他人の家を訪ねた。
誰かが一人で暮らすスペースを始めてみた。
そんな私には散らばっている物たちでさえ新鮮に写った。
見たこともない(日本語なのかなと思うような文字が羅列された)本とか。
家にはない薄いパソコン。
蛸足どころか百足足といいたくなる様な配線たち。
散乱しているゴミはほとんどがコンビニ弁当の空箱やスナック菓子の空き袋。
机の上にはまだ中身の少し残っている数種類のペットボトルたちが虚しく立っている。