同時に私は、健太と逗子海岸駅で別れた時と同じ空気を感じていた。
絡み合っていた枝がほどけて、お互いの世界が離れていくような、あの感覚だ。

もしかして……。

隣を見ると、街灯に照らされたるいさんの体が、一瞬ブレて見えた。

無言のまま歩いて、るいさんが乗る東横線の改札口はすぐそこだ。

もう、時間がない。

「ここで待っててください」

眠そうなるいさんを柱の陰で待たせ、券売機で恵比寿までの切符を買った。
ついでに売店で緑茶のペットボトルを買い、ボールペンを走らせる。

もし、インクが消えても筆跡が残るように、ペンの先端をペットボトルのフィルムに強く押し付けた。

「これで乗ってください。あと、これも」

切符とお茶を差し出すと、るいさんは財布を出そうとした。

「るいさんには、前に助けてもらったから」

その手を押し止めてるいさんを見上げた。