ちょうど休憩時間だった響を伴って、四人で湖畔まで出る。
水は穏やかで、時折吹く風に緩やかな波紋を作っていた。

「それで俺に彼女が出来たとたん、こいつも躍起になって彼女作ってさー」

「躍起になんてなってねーよ、偶然じゃん」

「でもあれだな、今年から俺らは彼女と祭りに行くから」

「去年までみたいに、お前らとは一緒に行けないからな」

彼女持ちの彼方と日方が、揃いも揃って私と響を見下す発言をしてくる。

「でもさ、去年の夏の一番の思い出といえば、あれだよな」

ふたりの彼女自慢にうんざり気味になっていると、ふいにからかうような口調で彼方が言った。

「今年こそはって思ったのに。また響が優芽に……」

「ぶん殴るぞ、彼方」

「お~こえ~。ていうか、いてーよっ! ごめん、ごめんって!」

響が彼方の言葉を遮り首にプロレス技を決めていたその時、吹き荒れた風に水面がにわかにざわついた。

じわじわと円状の波紋が広がり、辺りの木々が一斉にざわざわと騒ぎ出す。
空には突如雲が立ち込め、日の光が遮られた。

「雨が降るのかな」

プロレスごっこで盛り上がる響と彼方の隣で、日方が中空に手をかざす。
その時、ふと私の脳裏に妙な違和感が沸き起った。

「……ねえ、日方」

「ん?」

「前に、この湖で事件がなかったっけ?」

どうしてそんなことを突然言い出したのか、自分でもわからない。ただ大切な何かを忘れているような、居てもたってもいられない焦燥感に胸がざわついた。

「事件? この平和な町で、事件なんか起こるわけないだろ。テレビの見過ぎじゃないの」

日方は、私の疑問を爽快な笑い声で一蹴する。

「まあ、事件らしい事件といえばあれだな。俺らが小五の時の夏の事件が、この町では一番の大事件なんじゃないか」

「夏の事件?」

「何だよ、当事者のくせに忘れたのかよ」

呆れたように、日方が言った。

「優芽がこの湖で溺れて、町人総出で大捜索が行われたんじゃないか。見つかった優芽は奇跡的に生きていて、その時優芽を見つけたのが……」

そうだ、覚えている。

湖の底の景色も、遠く聞こえる地上の喧騒も。水面へと昇っていく泡も、嘘みたいに静かな水の世界も。

あの時、私を見つけてくれたのは――。

「響じゃないか」

「そうだったね」

やっと彼方とじゃれ合うのをやめた響に、私は視線を向ける。

振り返った響は私と目が合うと、すぐに顔を反らした。湖から反射した光のせいか、耳が赤い。

「あっ!」

そこで、日方が声をあげる。

「皐月だ。おーい、さつきぃ~」

のらりくらりと湖畔を歩んでいた私たちは、いつの間にかボート小屋の手前まで来ていた。

桟橋につけられた一艇のボートにもたれるようにして、皐月が文庫本を読んでいる。私たちに気づいた皐月がこちらを見て笑ったのが、遠くからでもわかった。

大仰に手を振っている日方は、そのまま皐月の方へと駆けていく。