免許を取って間もないというのに、バイトで日々社用車を転がしているせいか、響はお父さんから借りたらしい大きめの車を難なく運転した。

舗装のされていないがたがたの道を下れば、神社の石段のふもとに出る。

小さな祠の前では、今日も腰の曲がったおばあさんが両手を合わせて何かをしきりに祈っていた。

その姿を見つめながら、隣にいる響に訊いてみる。

「前に日方に訊いたんだけど、知ってる? 湖を守ってる龍神の言い伝え」

「知ってるよ。大昔、池に落ちていなくなった女の子が、神様になったってやつだろ?」

「女の子? 男の子かと思ってた」

「どっちかは、はっきりは伝わってないみたいだけど」

ハンドルを切りながら、ちらりとだけ響が窓の外に目を向ける。

「あの祠にお供えしてるものが、お手玉とか女の子のものばかりでさ。そう思っただけだよ」

「ふうん」

ガタン。

大きな石に引っかかったのか、車が激しく揺れた。