その後一週間、夜の出来事は続いていた。慎吾はもう、我慢の限界と見え、畑仕事に一段落ついた彼は自宅界隈を練り歩いてみることにした。
(隣の山部さん家が怪しいなあ...、ちょっと拝見)
役場勤めだった山部は日中家に居ない。ともすれば不法侵入にもなりかねないラインの所まで彼は踏み込んだ。
(やっぱり怪しい!こんなに動物の剥製があるなんて!これはこの人以外にあり得ない...帰ってきたら尋問だ!)
その日、山部はいつも通り仕事を定時で切り上げ、帰ってきた。開口一番、慎吾は単刀直入に彼の意表を突いた。
「お勤めお疲れ様です」
「あっ、これは高城さん。どうかなされましたか?」
慎吾は玄関前に佇んでおり、不審がられるのも無理
はなかった。
「実は気になることが御座いまして、ここ一週間ずっと動物の泣き叫ぶ声が聞こえてて、寝付こうにも寝付けないんですよ...」
一瞬彼の表情が強張った。が、すぐに平静を取り直し、言葉を投げ返した。
「いやっ、それは僕も気にかかっていたことなんです。どうも奇妙なこともあるようですね...」
「早く真相を知りたいものですナ」
「ですねぇ......」
あまり詮索されたくなさそうであったので話を切り替えた。
「そういえば、山部さん趣味等はお有りで?」
「ええ、実は小さい時分から動物が好きで、獣医師を目指していた時期もありました。」
「ですよね。この剥製とかお見事です。」
「これは、どうも...」
(矢張り怪しい...これではもう、この人以外にあり得ないではないか!?)
慎吾はモヤモヤした気持ちの悪い物体を吐き出せた気がした。その日はぐっすりとねむれた。