突然名前を呼ばれ見上げると、京があの時のウサギを抱いて僕を笑顔で見ていた。

「ああ、京さん。どうしたの?」

読んでいた小説を閉じながら僕は彼女に微笑み返した。

「エヘヘ、実はまたシロナが小屋から出ちゃって…追いかけてたらここまで来ちゃったんだ。そしたらまた木更津君がいたから思わず声かけちゃった!」

無邪気に笑いながら照れ臭そうにウサギを撫でる京。僕はそっか。と短く返事をした。

「あ、邪魔だったかな…?ごめんね。」

僕が素っ気ない返事をしたからか、彼女は申し訳なさそうに言った。

「いや。別に邪魔とか思ってないよ。ここ別に俺の私有地じゃないし。」

僕がそう言い返すと、彼女は何故かいきなりクスッと笑った。

「私有地って…木更津君って面白いんだね。あ、そうだ!この前用事でシロナ撫でれなかったよね?良かったら触ってみて!」