あの時、京の涙目の顔を見て思わず声をかけてしまったが、果たして僕は、困っていたのが他の生徒だったとしても同じようにしただろうか?
僕がそんなことを考えていると、

「どうしたの?木更津君。何か考え事してる?」

僕がはっと我に帰ると、京がウサギと共に僕を見上げていた。

「いや、別に。ウサギ見つかってよかったね。」

僕は慌てて笑顔を作った。

「うん!あ、そうだ。良かったら木更津君もシロナ撫でてあげて!もふもふで気持ちいいよ。」

そう言いながら、京は僕にウサギを近付けた。

僕は心の底から困り果てた。
僕の両手には血が付いているから。
左手はもう人に見せられない状態だし、右手にも少し血が付着している。
彼女の大事なウサギを僕の汚い血で汚すのは申し訳ないし、何より彼女を怖がらせる事になるだろう。

「えっと、悪い。俺ちょっと用事思い出したから行くね。じゃあ!」

僕は適当に下手な嘘をつき、その場から逃げた。

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