――『海賊王』さんが入室しました。



 海賊王さん:〈誰かいますか?〉



 ――『ハッシー』さんが入室しました。



 ハッシーさん:〈海賊王さん、久しぶりですね〉
 海賊王さん:〈ご無沙汰です、ハッシーさん〉
 海賊王さん:〈今日は事情通のハッシーさんに相談があるんです〉

 海賊王さん:
〈最近ネット上で有名な、あの都市伝説について教えてもらいたいです〉

 八ッシーさん:〈何でしょう。都市伝説にはいろいろあると思いますが〉
 海賊王さん:〈ネット上で無敗のプレーヤーがいるとかなんとかってやつです〉

 八ッシーさん:
〈あー、それですか。ネット将棋で有名なプレーヤーさんの話でしたね〉

 海賊王さん:〈ああー、それです。それです〉

 八ッシーさん:
〈確か、アバターネームをコロコロ変えるプレーヤーさんですよね。『ルビー』とか、『ダイヤモンド』とか……〉

海賊王さん:
〈最近、そのプレーヤーについて興味を待っちゃって……。将棋については浅知恵なもんで、知恵袋な八ッシーさんに訊きたかったんです〉

 ハッシーさん:〈なるほど。頼ってもらえるのは嬉しいんですけどね〉
 海賊王さん:〈……何か問題でも〉

 ハッシーさん:
〈いやあー。これに関してはどちらかっていうと、東京さんの領分だと思うんですよ……。まあ、説明ならば私にもできるんですが、東京さんは将棋の高段者ですから、将棋界の事情もよく熟知されているでしょう〉

 海賊王さん:〈へ~、東京さん、そんなに将棋が強いんですか?〉
 ハッシーさん:〈先日、アマの全国大会に出場したそうですよ〉

 海賊王さん:
〈マジですか⁉ 意外ですね。……ところで、最近、当の東京さん、ログインしませんね〉

 ハッシーさん:
〈彼も何かと忙しいようですよ。本職は売れっ子の建築デザイナーらしいですし〉

 海賊王さん:〈えっ⁉ そうなんですか〉
ハッシーさん:〈そうなんですよ〉
 海賊王さん:〈本当に意外ですね‼〉

 海賊王さん:
〈あの~、ハッシーさん。もしかして、リアルで東京さんとお知り合いなんじゃ〉

 ハッシーさん:
〈いえいえ。彼のFacebookにそう書いてあったのをチラ見しただけです〉

 海賊王さん:〈はあ、そうですか〉
 ハッシーさん:(なんだったら、彼のFacebookの番号教えましょうか〉



 ――『東京』さんが入室しました。



 東京さん:〈呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン〉
 海賊王さん:〈うわわああわああわあああわあわっわわわわ〉
 ハッシーさん:〈うぉぉぉwwwwwwwwwwwww〉
 東京さん:〈俺の個人情報は守られた〉
 東京さん:〈久しぶりにネット上に生還できたぜ〉
 海賊王:〈急に登場しないくださいよ、東京さん。あと、そのネタ古いです〉
 ハッシーさん:〈あれ? 今日も仕事、忙しかったんじゃないですか〉

 東京さん:
〈忙しいよ。めっちゃ、忙しい。でもこんな楽しそうな会話してたら、割り込まないわけにはいかないだろ〉

 海賊王さん:〈東京さんって意外とユニークな方なんですね〉
 ハッシーさん:〈そうですね♪〉
 東京さん:〈うるせぇ。照れるじゃねぇか〉
 海賊王さん:〈照れるんですね〉
 ハッシーさん:〈愉快というよりおちゃめって表現の方が正しいかもしれませんね〉

 東京さん:
〈うっせぇな。時間もないから勝手に話すぞ。そのプレーヤーはだな、残した伝説ってのがすごいんだな、これが〉

 海賊王さん:〈逃げましたね〉
 ハッシーさん:〈そうですね。これだから、東京さんはいじりがいがあります〉
 東京さん:〈てめぇら、喧嘩売ってんだろ〉
 海賊王さん:〈………(クスクス)〉
 ハッシーさん:〈………(ニヤケ)〉

 東京さん:
〈つっむのがめんどいなぁー、おい。じゃあ、勝手に話すぞ。奴は一言で言えば魔物だ〉

 ハッシーさん:〈結局、東京さんが話すんですね〉
 海賊王さん:〈魔物?〉

 東京さん:
〈ああ。しかもただの魔物じゃない。何でも変化できるゲームでいやー、チートすぎて誰も手出しできねぇようなクゾゲーな奴だ〉

 ハッシーさん:〈すごい言いようですね〉

 海賊王さん:
〈あの~、東京さん。すごさは十分に伝わったんですけど、具体的にどの程度なのか詳しくお願いします〉

 東京さん:〈それもそうだな〉

 東京さん:
〈実はな、そのユーザーの仕業だろうって記録はネット上に結構あったりすんだ。全部が本当かは定かではないが、つい最近だと、【将棋ネット】で400連勝。その前だと【サバイル将棋】で150人抜き。その前だと【天下統一将棋】で300連勝。これが同一のユーザーじゃないかと言われてんだ〉

 海賊王さん:〈400連勝‼ 150人抜き‼ それって、人間ですか⁈〉
 海賊王さん:〈いや、待ってください。初心者相手だったら不可能じゃないじゃ〉

 海賊王さん:
〈ほら、初心者相手に勝ちまくる大人げない強豪ってどこのゲーム世界でもいるじゃないですか。一つくらいその可能性はあるんじゃ〉

 八ッシーさん:
〈確かに全てそうだとは断定できませんね。ネット上では相手の顔までは見えませんからね〉

 東京さん:
〈それがな……。俺の親友で将棋アマ五段の奴がいるんだが、そいつが手も足も出ずに惨敗したんだ〉

 海賊王さん:〈!!!!!!〉
 八ッシーさん:〈!!!!!!!!!!!!!!!!!!〉

 東京さん:
〈それに、都市伝説に挑もうっていう腕自慢の輩が続々と連勝記録のカウントに手を貸してる状況らしい〉

 海賊王さん:〈それは本当にアマチュアですか⁉ プロとかじゃないんですか〉

 東京さん:
〈そう。だから、世間じゃ、専(もっぱ)らプロがやってるっていうのが噂なんだがな〉

 ハッシーさん:
〈プロだったら、十分にあり得ますよね。アマチュアじゃあ、プロには勝てませんからね〉

 東京さん:
〈しかしだな。ここから俺の見立てなんだが、こいつがプロではないと俺は思うんだ〉

 ハッシーさん:〈どうしてです?〉

 東京さん:
〈実はな、戦った奴に話を訊いたんだが、そいつらはみんな口を揃えてこう言うんだよ、「あの指し方はどのプロとも一致しない」ってな〉

 海賊王さん:〈ってことは、アマチュアってことですか‼〉

 東京さん:
〈俺はそう思っている。あるいは、奨励会員の誰かだ。いずれにしても、俺はわくわくするよ〉

 ハッシーさん:
〈同感です。私も勝負師の端(はし)くれですから、一度は手合(てあ)いをお願いしてみたいですね〉

 東京さん:
〈おおやべぇー‼ 悪いな。打ち合わせのスタッフが来ちまったよ。キリが悪いが今日はこれで失礼するぞ〉

 海賊王さん:〈あっ!〉
 東京さん:〈まだ、何かあるのか〉
 海賊王さん:〈あの~、東京さん。時間があったら今度もこの話、しましょうよ〉
 ハッシーさん:〈いいですね〉
 東京さん:〈じゃあ、次の機会にでもな。そんじゃな〉
 







               【ゆったり団らん】(とあるSNS内掲示板より)