「言ってない。」

「じゃあ、そのブーケ持って、行きなさいよ。」

小百合は、私の腕を引いた。

「ちょっと、小百合!」

「紀之は、階段の側にいるから。」

そして私は、小百合に背中を押された。


私はその勢いで、金子さんの側へと、歩いて行った。

「ああ、三浦さん。」

小百合を待っていたのか、金子さんは一人、階段の下に立っていた。

「今日は、おめでとうございます。」

改めて、お祝いの言葉を告げた。

「ありがとう。」

金子さんの笑顔は、魔法だ。

いつも、私をドキドキさせる。

その魔法も、今日で終わりだ。


「あっ、ブーケ。三浦さんが取ったんだね。」

「はい。」

「じゃあ、次は三浦さんの番だ。」

「それは、どうでしょう。」

「ははは。いるんでしょう?彼氏。」