「ブーケトスになります!」

同じ同僚の女性たちが、キャーキャー騒いでいる。

私は一歩引いて、ちょっと遠くにいた。

「行きますよ!」

小百合の両手が、一気にあがる。

ブーケは、小百合の手を離れ、大きな弧を描いた。

「キャー、私のモノよ!」

沢山の女の子達が、腕を伸ばす。

だが、そんな女の子達の期待を裏切り、ブーケは、私の元へと飛んで来た。

「えっ……」

取る気もなかったブーケの参上に、一人呆けている私を置いて、取れなかった皆は、ため息の嵐だった。


「雪歩、ブーケ取った?」

小百合が、私に近づいて来た。

「小百合……」

「綺麗でしょう?それ。だから、あげる。」

小百合はそう言って、無邪気に笑った。


「紀之に、好きだって言った?」