「一緒に、帰りたがる?」

「うん。仕事が終わったら、ずっと俺と一緒にいたいんだってね。」

その金子さんの笑顔が、小百合との順調な交際を、表しているかのように見えた。

「ご馳走様です。」

「ええ?別に惚気てないよ?」

「十分、惚気てますよ。」

私の中で、何かが弾けた。


時計は、もうすぐで18時を示す。

「金子さん、小百合のお迎え、来ますよ。」

「おっ、もうそんな時間か。」

そして小百合が、会議から帰って来た。

「紀之、帰ろう。」

「ああ。」

私が後ろを振り向くと、小百合は自分のバッグを、足元から取り出していた。


「お疲れ様、小百合。」

「お疲れ様。」

何でもない会話。

でも二人が帰った後、私の目からは、涙が零れた。


どうすれば、金子さんの事を、忘れる事ができるんだろう。