でも、彼女の瞳は、どんどん涙で潤んでいった。

「……雪歩が好きな相手って、紀之でしょう。」

私は、小百合から視線をずらした。


これだったのだ。

私が嫌で、逃げたかったモノは。


「そんな訳ないでしょう。金子さんは、仕事の先輩。尊敬はしているけれど、男性として好きではない。」

「嘘つき。」

彼女の言葉が、胸を刺した。

「知ってるんだから。」

瞳から溢れた涙が、私を責めに責め続けた。

「違うって、言ってるでしょう?どこから、そんな考えが生まれるの?」

「見ていれば、分かるもの!」


私は、その場から動けなかった。

小百合のその瞳が、私を捉えて、離さなかった。

嘘をついているのは、誰の為?

小百合の為だと思っていた事が、だんだん自分の為だと知った。