そんな泣くような気持ちが、小百合にバレた。

ある日、お手洗いに行った時だ。

鏡の前で、前髪を直していると、後ろに小百合が立っている事に気づいた。


「わっ、びっくりした。」

驚いて、慌てて後ろを振り向くも、小百合はため息ついて、こっちにやって来た。

「ねえ、雪歩。」

「何よ。」

「好きな人、いるでしょ。」

胸の中に、嫌なモヤが生まれた。

何だろう、この逃げたくなるような気持ち。


「いないよ。」

「嘘つかないで。」

小百合の大きな目に、じっと見られたら、男は嘘なんてつけないだろう。

でも、私は女だ。

彼女を騙せる事だってできる。

「もし、私に好きな人がいるとして、それがどうだって言うの?」

半分、喧嘩越しになってしまったのは、彼女が一番幸福の絶頂にいると、考えてしまったからか。