「血が繋がってるからって、家族っていうのがみんながみんな良いものじゃないことも、私は知ってる。だから、甘えられる家族がいるっていうのは、それだけですごいことなんだよ。奇跡みたい」

 話しているうちにだんだんと身体をまるめていた事に莉依子は気付き、意識的に背筋を伸ばす。

 説教のような真似事をするつもりはなかったのに、これでは同じようなことだ。
 膝を抱えてしまう癖にも自分で気付いて、できるだけしないようにと気を付けていたけれど、一度伸ばした背筋も丸まり、やはり揃えた膝の上に顎を乗せてしまった。
 龍が、いつもより目を開いて見ている。
 口を挟もうとしても、その余地のない莉依子の言葉に圧倒されるかのように唇を引き結んで、それでも何か思う所があるらしく時折唇を開きかけては、また閉じていた。

 いつもの莉依子なら、龍が話しだすのを待ったかもしれない。
 けれども、今は止まれそうになかった。

「龍ちゃん。私とどのくらいぶりに会った?」
「……2年ぶりくらい」
「そうだね。龍ちゃん、お酒飲めるようになったんだもんね」
「…………」

 龍がハタチになったのは春だった。
 成人式はまだ先だ。
 さすがにその時は帰るだろうから、その時まで待てばいいと、お父さんは言っていたけれど。
 龍の誕生日の夜、いつものように晩酌をするお父さんの背中は寂しそうだった。