昨日会った龍の友達、鶴来もそうだ。

『頑張ってるとか口が裂けでも自分で言わないタイプだな』

 龍の事を、そう評していた。
 鶴来は全体的に軽いというかへらへらしていてあまり良い初印象ではなかったけれど、それとなく周りをみて配慮が出来る人間に見えた。
 ちゃんと龍を理解してくれている人間が龍の傍にいることは、莉依子をとても安心させた。
 『幼馴染』の莉依子にだって、文句を言いながらも優しさは変わらない。

 ……あとは……

 抱えた膝を、さらにぎゅうと両腕で抱き込む。
 毎日のように電話の前に立つ龍の母親の姿が頭を過ぎった。
 表向きはいつも豪快に笑い、誰にも愚痴や弱音を吐かない彼女に、莉依子は優しい言葉のたったひとつも掛けられない。何も出来なかった。

「……もうちょっと、優しさを見せてあげられないかな、龍……」

 小さな小さな声は、龍の耳には届いていないだろう。

 本当はここに龍の母親を連れてきてあげたかったけれど、それは出来なかった。
 だからせめて、莉依子が龍に気付かせてあげることが出来たらと願う。