龍は昔から、友達をつくるのが上手なタイプではなかった。

 まだランドセルが真新しかった頃は、誰にでもよく笑顔を見せていたけれど、成長するにしたがって無表情に近いものになった。
 せっかくの可愛い顔が台無しだからもっと愛想良くしなさいと、長い休みの度に家に来た親戚のおばさんがよく言っていた。

 たぶん、それが龍にとっての原因だと、莉依子は思っている。
 周りの大人があまりに『可愛い』と言うものだから、龍は笑わなくなった。ちなみに龍の両親はどちらも息子に対して『可愛い』と言った事はほとんどない。

「りいこちゃん」
「……あ? あ、はい」

 ぼんやりと今の龍に昔の龍を重ねてみていた莉依子は、鶴来に声を掛けられて我に返った。

「りいこちゃんにとって、久住ってなんなの?」
「……え?」
「何言ってんだお前」
「久住は黙っててよー。ね。どんな存在? お隣のお兄ちゃんとか、憧れのお兄ちゃんとか、初恋の人とか色々あるじゃん?」
「ツル」
「ちょっとだけ、ね。教えてくれない?」
「え……」

 どんな存在、と言われても。

 莉依子は照れることも迷うこともなく、真っ直ぐに答えた。

「大事な家族です」