「幸せもんだなー久住は」
「はぁ!?」
「身体の心配してくれる可愛い子がいてさ」
「……言ってること母親と同じだけどな」
「そうだよ龍、お母さんだって心配して」
「そうだぞ久住、実家の母さんも心配してだな」
「莉依子はともかくツルはやめろ、昨日の今日で抉ってくんな」
「そういやあれから喋ってねぇの?」
「……今日はまだ会ってない、っつーか今その話はナシ」
「あ、ワリ」

 龍はちらりと莉依子を見遣ると、顔の前で手を振って話を切り上げる。
 鶴来もこれには大人しく従い、莉依子へふりむいてわざとらしいほどの笑顔を作った。何の話かわからなくても、莉依子は特に気にしていない。
 
 むしろ、龍が友達と仲良く話す姿を見れるだけではなく、その相手がどうやら秘密の話まで出来る間柄であることが嬉しくて仕方なかった。

 身体が健康で、友達と仲良く。
 勉強はそこまで出来なくたって、このふたつの心配が解消されたことが莉依子は嬉しかった。

 夜中に働く事に心配はあっても、鶴来がいれば多分大丈夫だろう。
 この様子なら、働きすぎだと注意くらいはしてくれそうだ。
 龍が素直に聞くかは怪しいところだけれど、近くに口を出してくれる人がいるというのは莉依子にとって嬉しいことだった。