太陽が出ている間は大学で勉強し、夜中は働いているという龍。

「……ちゃんと寝てるの……? 龍、寝る時間あるの?」
「は?」

 莉依子も無意識のうちに口からこぼれ落ちていたらしい声に、龍は眉を顰めた。
 我に返った莉依子があ、と顔を上げてももう遅い。
 鶴来はといえば、どこか楽しそうに頬を緩ませて龍へと振り向いた。

「だってさー、久住クン。ちゃんと寝てんのか?」
「いやなんでツルまで乗っかってくんの」
「可愛い女子高生が身体の心配してくれてんだよ? 女子高生! 俺なら嬉しくてたまんないけど」

 鶴来は軽口を叩きながらも、「心配しただけだよね? バイトがほぼ夜中だって聞いたから」と莉依子には優しく笑いかけてくる。
 ただコクコクと頷くばかりの莉依子に、龍はため息をついて答えた。

「……ちゃんと寝てる」
「……無理、してない?」
「してねぇよ」
「頑張りすぎないでね。からだってすごく大事だよ」
「わかってるっつの」

 莉依子と龍を、まるでテニスの試合でも見ているかのように首を動かして見守っていた鶴来は、感心したように長く息を吐き、右手でポリポリと頬を掻く。
 そしてなるほどねぇと呟いたあと、龍の背をバンと叩いた。