髪がくるくるしてしまうことを気にして、自分の顔が男らしくないことを気にして。
 睫毛が長くて、高いところが得意じゃなくて、何でも1番にならないと悔しくて眠れなくて、隠れたところで必死で努力する。

 莉依子はひとしきり思い浮かべてから、全てを口にしていいとは思えず、鶴来の向こう側に座る龍を盗み見た――つもりが、ばっちり目が合った。
 余計な事を言うなよという無言の圧力がすごい。

「……負けず嫌い、かな」

 莉依子の口からようやく押し出されたのは、結局ひと言だった。
 それを聞いた鶴来は、にっこり笑って莉依子の頭へと手を伸ばし、そのまま撫でる。急なことで構えるのが遅れた莉依子はされるがままだ。
 手が離れたと同時に、鶴来は口を開く。

「俺の知ってる久住も同じかな」
「……負けず嫌いですか?」
「そりゃーもう。でも頑張ってるとか口が裂けても自分で言わないタイプだねありゃ」
「聞こえてんぞツル」
「課題やレポートやばいレベルにある時だってバイト休まねーしなー」
「……バイト?」
「そ、バイト。ファミレスで働いてんだよ。シフトはほぼ夜中」
「時給いいからな」
「久住は黙っててくれない? りいこちゃんは俺に訊いてるの」

 と言いながらも楽しそうに言い合いを始めた鶴来と龍の声を耳に流しながら、莉依子は考えた。