「赤くなっちゃった、可愛いねー」
「ツルが喋るとややこしいからちょっと黙ってろ。……で? なんだよ」
「あ、えっと……」

 鶴来は期待に満ちた目で莉依子を見つめ、龍はどこか不安げな顔だ。
 余計な事を言うなよという心配かもしれない。大学へ来てからの友達と言っていたから、昔の話は出されたくないはずだ。男の子はきっとそうなんだろう。

「龍って、大学だとどんな感じですか?」
「えーこいつの話?」
「そんなん聞いてどうすんだよ」

 龍と鶴来が、同時に不満げな声をあげた。
 ふたりを見遣ってから、莉依子はしっかりと頷く。大学での龍は、一体どんな風に友達と過ごしているのだろうか。会わないでいた2年間を、どう暮らしていたのかを知りたい。

「莉依子、お前まさか母さんに頼まれたとかじゃないよな? 逐一報告しろとか」
「何? お前の母ちゃん、りいこちゃんをスパイに送り込んできたの」
「あり得るのが怖ぇんだよ」
「違うよ」

 訝しむ龍に、莉依子は強く否定した。
 そう言われたら龍のお母さんにも報告したい気持ちもあるけれど、他でもない自分が知りたい。
 これだけ軽口を言い合う中の鶴来なら、きっと繕わない龍の姿を理解しているはずだ。