膝の上に掛けてある布を握りしめながら、莉依子は口を開いた。

「あの……鶴来さん」
「ツルでいいよー。あ、ユキちゃんでもいいけど」

 ユキちゃん?

 莉依子は首を傾げた。
 龍は青年をツルと呼び、ツルギと紹介した。ひと言もユキなんて名前は入っていない。
 ツルが白い鳥だから、そのつながりでユキちゃんなのだろうか。

 黙っている莉依子を困っていると判断したのか、龍が助け船を出す。

「おいツル、いきなり馴れ馴れしい」
「え? あーごめんごめん。で、お話はなーに? あ! っていうか君のお名前は?」
「質問はひとつにしろ」
「えっと、りいこです」
「かっわいい名前ー。りいこちゃんって呼んでいい?」
「おいツル」

 合間に入る龍のツッコミと、脱線しそうな鶴来のおかげで、莉依子が口を挟める隙がなかなか見つからない。
 龍は困ったようにふたりを交互に見ている莉依子に気付いたのか、ベッドに腰を下ろして改めて紹介を始めた。

「……莉依子は俺の実家の隣に住んでんだよ」
「へー! いいね、幼馴染ってやつかあ。高校生?」
「は、はい」
「いいねーいいねー、女子高生。良い響き……青春のきらめき……忘れ去られた青春……宝だねえ……」
「で? 莉依子はツルに何聞こうとしてたんだよ」
「うん、なに? りいこちゃん」

 間近でふたりの男に見つめられ、莉依子の頬が何故か熱くなってくる。