軽薄そうに見えないこともないけれど、それでも龍の後ろから先に進むことなく莉依子の傍へ来ているという点で、気配りのできる人間なのかもしれない。

「で? 久住。こちらの可愛いお嬢さんは?」
「かわっ!?」

 間違えた。見た通り軽い男なのかもしれない。

 口を開けて狼狽する莉依子と紹介を待つ鶴来を交互に見た龍は、またため息をついた。
 面倒だと顔に書いてある。

「……えーと。これは鶴来。通称ツル。ただの同級生。以上」
「『以上』!? それだけ? つか『これ』ってなんだよ」
「それ以上必要な情報ねぇだろが」
「いい男だけど彼女募集中だよ! とか。っつーかただの同級生って冷たくない? 俺たち友達でしょ?」
「気持ち悪ぃ」

 龍と鶴来の掛け合いは続く。
 莉依子はふたりのやり取りを見ていて、不思議な安心感が生まれていた。

「龍ち……龍のお友達ですか?」
「あ、喋ってくれた。おい喋ってくれたけど」
「人形じゃねーんだから喋るだろ」

 目を輝かせながら龍の肩を思いきり叩いた鶴来の勢いに莉依子は肩を跳ねさせたものの、単に驚いたからで怖かったからではない。
 ごめんねーと軽く謝る鶴来はやはりどこまでも軽そうには見えたけれど、あの龍が呆れながらも楽しそうに見える。