――コンコン。
控えめに聴こえた音に、莉依子が龍を振り仰ぐと、一瞬困惑した顔をして莉依子を見た。莉依子も多分似た顔をして龍を見返す。
保健室という場所が個室ではない事くらい莉依子も理解しているし、そもそもノックの必要性がないのだ。龍も同じように思ったらしく首を傾げて逡巡してから「どうぞ」と返した。
途端に、勢いよく引き戸が開かれる。
「おっじゃましまーす」
「ツル! お前」
白い引き戸から顔を出して近付いて来たのは、髪がくるくるしている青年だった。
白いシャツと、濃紺のパンツというシンプルな出で立ちと派手な髪型が、これまた派手な顔立ちによく似合う。やたら大きな鞄には一体何が入っているのか、青年の動きと比例してガシャガシャと奇妙な音がした。
龍は心底嫌そうな声をあげて『ツル』と呼んだ青年へ近づき、ジリジリとドアの外へ追いやろうとしていた。
そんな龍にも、またベッドの上で半身を起こしぽかんと口を開けたままの莉依子を意に介することなく、ツルと呼ばれた青年は何やら笑みを浮かべて心底楽しそうだ。
「久住が女子を学内に連れ込んだっていうからぁ、来てみたんですけどぉ」
「バカいうな」
「目撃者多数だぜ?あっどーもー鶴来といいまーす。よろしくー」
「あ、えっと……」
「よろしくしなくていいから」
莉依子と目が合ったツル――鶴来はにっこりと笑い、莉依子を背にしている龍の声が鋭く入る。
控えめに聴こえた音に、莉依子が龍を振り仰ぐと、一瞬困惑した顔をして莉依子を見た。莉依子も多分似た顔をして龍を見返す。
保健室という場所が個室ではない事くらい莉依子も理解しているし、そもそもノックの必要性がないのだ。龍も同じように思ったらしく首を傾げて逡巡してから「どうぞ」と返した。
途端に、勢いよく引き戸が開かれる。
「おっじゃましまーす」
「ツル! お前」
白い引き戸から顔を出して近付いて来たのは、髪がくるくるしている青年だった。
白いシャツと、濃紺のパンツというシンプルな出で立ちと派手な髪型が、これまた派手な顔立ちによく似合う。やたら大きな鞄には一体何が入っているのか、青年の動きと比例してガシャガシャと奇妙な音がした。
龍は心底嫌そうな声をあげて『ツル』と呼んだ青年へ近づき、ジリジリとドアの外へ追いやろうとしていた。
そんな龍にも、またベッドの上で半身を起こしぽかんと口を開けたままの莉依子を意に介することなく、ツルと呼ばれた青年は何やら笑みを浮かべて心底楽しそうだ。
「久住が女子を学内に連れ込んだっていうからぁ、来てみたんですけどぉ」
「バカいうな」
「目撃者多数だぜ?あっどーもー鶴来といいまーす。よろしくー」
「あ、えっと……」
「よろしくしなくていいから」
莉依子と目が合ったツル――鶴来はにっこりと笑い、莉依子を背にしている龍の声が鋭く入る。