しかし、今龍が口にした言葉に莉依子はすぐさま反応した。

「おんぶ? してくれたの?」
「他にどうしようもねえだろーが!んで保健室に運んだはいいけど俺は講義があるし休むのもなんだしどうしようか考えてたら先生が見てくれるっつーから置いてったけど結局3コマ終わるまで寝てるとかあり得ねーだろマジで」

 寝起きの頭に、龍の早口は半分くらいしか入ったこない。
 きちんと入ってきていたとしても、おそらく半分以上理解できない事は莉依子にはわかっていたし、半ば諦めもこめて龍の声を右から左へ流し続ける。

 言ったらかなり怒られるだろうけれど、内容よりも正直、顔をじっと見ているだけで幸せだ。

 ぼんやりとして返事をしない梨依子に、ふん!と擬音でもつきそうな勢いで横を向いた龍は、最後に腕組みをして「心配したんだからな」と呟いた。

 やっぱり、心配してくれてたんだ。

 莉依子の頬が緩んだけれど、龍は気が付かない。
 よいしょと上半身を起こすと、振り向いてくれた。何も言わないけれど、起き上がって大丈夫なのかと顔に書いてある。こういうところが優しいと莉依子は思う。
 笑いかけてみると、すぐにまた窓側へ向いてしまった。