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白っぽい世界に、だんだん色がついていく。
ぐにゃりと円を描くようにそれが中心へと巡っていくと、そこには人影があった。天井を背にして唇を引き結んでいる青年。
ついさっきまで会っていた、幼くてふくふくした顔はどこにもない。
だけど面影は色濃く残る、大事な人。
「……龍ちゃん」
「龍ちゃん、じゃねぇだろ」
ため息交じりに返された声も顔も、紛れもない『今の』龍だ。
莉依子が龍ちゃん、と呼んだにもかかわらず怒りの言葉は返ってこなかった。呆れたような口調と同じ表情の影に、心配の色が見え隠れしている。
「………?」
目を凝らしながら、ゆっくりと首を回して莉依子は自分が今どこにいるのか確認しようとしたけれど、龍の背後に見える景色に、全く見覚えがまるでない。
真っ白な蛍光灯が二本。視線を龍から左へとずらすと、これまた真っ白な……いや、ほんの少しだけ青みがかったようなカーテン。外からの風で揺れていて、それとほぼ同時に数人の話し声が聞こえてくる。
ぼんやりとそれらを見つめていると、汲み取ったらしい龍が口を開いた。