莉依子は龍の返事を待たず、ごろんと仰向けになった。
 上を見ていればいい。怖いことは何もないし、問題もない。
 しばらく莉依子を見つめたまま迷っていたらしい龍が、それに続く。

『……おそらが、みえるね』

 心底ほっとしたような可愛らしい声に、莉依子はまた目尻に何かが浮かんできた。

『そうだね、龍ちゃん。すごく青いね』
『えのぐでいちばんだいすきないろだよ。おそらと、うみのいろ』
『そうだったね。……龍ちゃん、もう怖くない?』
『さいしょっからこわくないってば。りゅう、おとこのこだもん』
『あ、ごめんね、そうだったね。ねえ龍ちゃん、さっきよりもずっとずっと気持ちがいいね』
『うん』

 龍が目を瞑ると、長いまつげの影が肌に落ちる。

 可愛い、可愛い龍。
 ふたりだけの時間が多かった頃は、莉依子だけが知っている姿もたくさんあった。