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 身体が軽い。
 ゆらゆらと揺れて、まるで水の中にいるみたい。
 本当は水なんて大嫌いだけど、こんな風にいられるならもっと好きになろうかな。
 いや、やっぱり生まれ変わったら好きになることにしようかな。

 そう思いながら莉依子が目を開けると、下の世界が透けて見えていた。
 ぎょっとして飛び跳ねそうになったのを堪え、冷静に目を凝らす。納得した。雲に乗っているのだ。

(……絶対夢だ、これ)

 頭や首筋を掻きながらぼんやりとそれを自覚するものの、どうしたら目覚めるのかがわからない。
 いっそのこと、落ちてみたら起きるだろうか。試してみるのは少し怖いけれど、ほかに方法が思い付かない。

『よ、よし』
『こら、りーこ! あぶない! どこかにしっかりつかまってないとおちちゃうよ』

 身を乗り出そうとしたその時、鈴の鳴るような可愛らしい声がそう遠くない距離から聞こえてきた。
 途端に莉依子の身体は固まる。聴き覚えがありすぎた。

(この声、知ってる)
(でも、まさかそんなことって。でも夢だから何でもアリ……?)

 声のする方向へギリギリと顔を動かすと、予想通りの人物がいた。