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 こんな短い距離で電車を乗り換えるなんて迷ったりしないの、と聞いたらただひと言、「田舎者」と龍は笑った。
 自分だって、ほんの2年前までその田舎者だったくせに、妙に都会者ぶるところが腹が立つ。
 
 ……でも、落ち着かないものは落ち着かないよ。

 大きな声で言えない今、心の中で吐き出した。
 莉依子は先ほど乗り換えた時から、だんだんと息苦しさを覚えていた。
 そもそも、人がたくさんいる場所が得意ではない。のびのびと手足を伸ばせてゆったりと昼寝ができる、龍の実家のまわりのような空気が性に合っている。
 
 だけど、ここは全てが狭い。 
 龍を待っていた時にも思ったけれど、まず空が狭い。誇らしげに並んだ高い建物はどれも綺麗だし立派で、思わず言葉を失った。
 でもそれ以上に、大好きな空が切り取られた程度にしか見えないことに驚いて、寂しかった。

 龍はここでひとりで暮らしていて、寂しくなったりしないのかな。

 すぐ目の前で揺れる背中を見つめながら、莉依子はそんなことを思っていた。