そういえば、龍がまたランドセルを背負うより小さなころ、両手をこんな風にひろげて『はーっ!』って言っていたなぁと莉依子は思い出す。
 
 正義の味方でも敵役でも全力で練習して、友達に挑んでいた。
 莉依子はよく練習台にされたものだ。

「えーっと……何? 龍ちゃん、この手。戦いごっこ?」
「いつの話してんだよ」

 突然広げられた大きな手のひらを前に、莉依子は進行をやめその場に座り込んだ。
 龍は忌々しく眉を顰めながらも、どこか諦めにも似た苦笑を浮かべる。

「止まれ、ってことだ。このバカ」

 言うと同時にしゃがみこんだ龍は、その手でくしゃっと莉依子の頭を掴んだ。そのままわしゃわしゃと髪を撫でまわす。

「ちょっとーやめてよー」
「仕置きだこんにゃろ」
「やめてってばー、ぐしゃぐしゃ」

 やめてよ、と言いながらも、莉依子はその手に安心を感じていた。こうしてあたたかい手で撫でてくれていた頃を思い出すから。
 起きる前まで見ていた夢を思い出して、胸が温かくなりながらも少し苦しいような、ごちゃまぜの不思議な気持ちになっていた。