何はともあれ、龍の言う通り大人しく柔らかなベッドに潜り込んだはいいものの、莉依子には決定的に何かが物足りなかったのだ。
 龍の部屋で、龍が眠っているベッド。
 龍が実家で暮らさなくなってから寂しくて入らなくなったあの部屋よりは心地よくて、眠れるかとも思ったのだけれど。

 真っ暗な中、バスタオルに包まれて目を閉じた莉依子は気が付いた。
 すんと鼻を鳴らして敷き布団の上をコロコロ転がり、どうにかしてひとりで足りないものを補おうと試みてはみたのだ。
 だけど、無理だった。

「おい聞いてんのか、お前はあっちで寝ろって言っただろ」
「うん……聞いてる……」
「なのになんでそこで、俺の隣で寝てたんだって言ってんの」

 莉依子は、右目を擦りながら身体をゆっくりと起こし、その場に正座をした。狼狽したままの龍を微睡んだ瞳で見つめながら、唇を開く。

「だって、においだけじゃ足りない」
「は」

 莉依子がはっきりと理由を述べると、龍はその先の言葉を失った。
 文字通り目が点になった今の龍の顔は、なかなか見ものかもしれない。ちょっと目が覚めてきた。
 念押しするかのように繰り返す。龍の目を見たまま。