「ばっ、ちょっ、おま、何で、ああああっちで寝ろってつーかもう龍ちゃんてのマジでやめろよガキじゃねーんだから!」

 龍はロフトを指差しながら、かなり狼狽している。
 後半は昨日から言われ続けていることだけれど、今抗議したいことは前半に集約されているはずだろう。
 寝起きと相まってか、余裕ぶって見せるための余裕が全く見当たらない。

 昔っから、寝起きは頭ちゃんと回ってないんだよね。
 だから悪戯を仕掛けるならいっつも朝だった。

 過去を思い出した莉依子の口元がつい緩む。

 昨夜文句を言いながらも夕食を提供してくれた龍は、自分はリビングに寝るからと莉依子にロフトベッドを勧めてくれた。
 自分はソファでも眠れるから大丈夫だと莉依子が断っても、頑としてきかなかった。

 そして、21時には部屋を真っ暗にされて、寝るように促されてしまったのだ。
 早い。早すぎる。
 あんな時間に部屋の電気を消したのは、龍が小学校低学年以来のはずだ。高学年に入るころには既にもう少し遅い就寝になっていた。

 ……そういえば、あまりまともに視線も合わなかった気がする。
 裸を2度も――運んでくれた時も含めたら3度も見せてしまったせいか、身体を見ないようにするように落ち着きもなかった。

 莉依子は渋々それに従いながら、自分を少しでもひとりの女の子として意識してくれているのだろうかと、何だか不思議と少し胸が高鳴った。