裸のままの莉依子が浴槽に湯をためていいかと聞きに部屋へ来たとき、当然ながら龍は怒った。
 けれど、いつまでも出てこない莉依子を心配して声を掛け、返事がうまく出来なかっただけで迷わず扉を開けて運び出してくれた。
 命に関わる事だからと言われてしまえばそれまでだけれど、莉依子にとっては嬉しくて仕方ない事実。

 かわいいけど可愛いだけじゃない、強くてやさしいヒーロー。
 あの頃となにひとつ変わっていない。

 龍がかけてくれたバスタオルにそっと触れて、莉依子はゆっくりと身体を起こした。

「ん? なんだもう起きて」

 いいのか? と続けようとした龍の声はそこで途切れる。
 振り向いた先の莉依子はまさに今タオルを剥ぎ取り、着替えへと手を伸ばしていたからだ。瞬時に首をひねり元の体勢へ戻った龍の肩は、色んな意味で震えている。

「だからお前はもう少し恥じらいってものを持て! 頼むから!!」

 そしてまた、龍の絶叫が莉依子の耳へ刺さるのだった。