そうだ、と何かに思い当たったように呟き、龍が立ち上がる。
 目で追う莉依子を同じく目で制して、そのまま廊下へと出て行った。そしてすぐに戻って来る。

「……ほら」

 すぐそばに置かれたのは、莉依子が用意していた着替えだ。
 ありがとうのつもりで頷くと、龍はテーブルに置いたグラスをもう1度手にする。

「まだ飲むか?」

 莉依子は首を振った。
 ぼんやりしていた頭はだいぶ冴えてきたし、立てそうにないほどにぐるぐるしていた視界も元に戻っている。
 あとは少し横になっていれば、回復しそうだった。

「欲しかったら言えよ。……あー違うか、肩でも背中でもつついてくれりゃいいから」
「………な、に?」
「声出せんのか。でも無理すんなよ脱水しかけてたんだから」
「………うん」
「俺はここにいるからコレ飲みたきゃ言え。あと……服、着ろ」

 頷いた莉依子を確認すると、龍はソファを背にしてすぐの前の床に座り、またテレビを見始めた。

 よくわからないテレビと龍の頭を見つめる。
 莉依子は不謹慎とわかっていながらも、今の状況に感謝していた。