・・・・・

「ねーねー龍ちゃん、お湯ためていい? っていうかため始めちゃったんだけど、よかった?」
「は? って、はああ!?」

 莉依子の声に振り向いた龍は一瞬目を剥いて、そして逸らした。

「お前なんつーカッコで、つかびっしょびしょじゃねーか!」

 無理もない。
 龍のいる部屋のドアを開けた莉依子は、素肌のままだ。タオルを巻きつけることもせず、シャワーを終えてから上がって、そのままぺたぺたと歩いて出てきてしまった。
 髪も身体も当然ずぶぬれであり、雫がひっきりなしに落ち続けている今も、まさにボタボタと床が濡れている。

 龍は慌てて莉依子へと駆け寄ったものの、視線はあさっての方向だ。
 莉依子の身体をくるりと反転させて、自分は背中越しへと回り、両肩を掴んで浴室へ戻るよう強く促す。

「別に風呂なんか勝手にためりゃーいいだろが! いいから戻れ!」
「だって勝手にやっちゃ龍ちゃんに怒られるかなって」
「だってじゃないそんなことで怒んねーよ! タオルで隠すくらいしろよっつーかうっわ俺まで濡れたし」 

 あらゆる感情でごちゃごちゃになっているらしい龍は、莉依子と共に洗面所に入ると浴室の扉を勢いよく開けて、莉依子を中に押し込んだ。