どうにか脱ぎ終えたら、次は下だ。
 デニムのパンツを足先で踏みつけるようにして脱ぎ、下着も投げ捨てるように脱ぐ。
 さすがにこれらを洗濯機に入れるわけにはいかない。
 パジャマ代わりの服と同じように、脱いだ服で下着も包んで丸めておいた。

「おお、これまた意外……」

 浴室の扉を開けた莉依子の口から、自然と漏れた言葉だった。

 龍の父親が掃除など一切しない人のせいか、男という生き物は水場の掃除は苦手なものだと思い込んでいた。しかし、どうやらそれは本当に思い込みだったらしい。

 ピカピカに磨き上げられた浴室の壁に、指を這わせてみる。
 淡く薄いブルーのそこに、うっすらと莉依子の指が映った。龍の母親でも、ここまでピカピカにするのはお正月前くらいだったように思う。

 結構、綺麗好きなんだ。

 莉依子の口元に、笑みが浮かぶ。
 新たな発見をしたようで、とても嬉しい。

 ガコ、と音を響かせながら椅子を引き寄せ、莉依子は鏡に向き合って座った。
 顎まで綺麗に揃ったボブの、まだ見慣れない自分の姿を映して。